DEBの影響を受けていない皮膚では、7型コラーゲンがアンカリングフィブリル(係留線維)の形成を助けています。
アンカリングフィブリルは、皮膚の内層(真皮)と外層(表皮)の層を結びつける役割を果たしています。
- 表皮
- 真皮
- アンカリングフィブリル(係留線維:7型コラーゲン)
表皮水疱症(EB)は、皮膚が非常にもろくなり、わずかな刺激でも皮膚が裂けたり水ぶくれができたりするという共通の症状がある、遺伝性の水疱(水ぶくれ)性疾患の総称です。
EBには主に、栄養障害型表皮水疱症(DEB)、単純型表皮水疱症(EBS)、接合部型表皮水疱症(JEB)という3つの型*があります。
それぞれの型には遺伝的要因があり、それが体の中のタンパク質を作るはたらきに影響し、皮膚の層がはがれやすくなります。EBの原因となる遺伝子は、親から子へと遺伝します。
栄養障害型表皮水疱症(DEB)
単純型表皮水疱症(EBS)
接合部型表皮水疱症(JEB)
責任遺伝子
COL7A1
影響を受けるタンパク質
7型コラーゲン
影響を受ける皮膚の層
真皮
責任遺伝子
CD151、DST、EXPH5、KLHL24、KRT5、KRT14、PLEC
影響を受けるタンパク質
BPAG1、エクソフィリン5、Kelch-like protein 24(Kelch様タンパク質24)、ケラチン5、ケラチン14、プレクチン、テトラスパニン24
影響を受ける皮膚の層
表皮
責任遺伝子
COL17A1、ITGA3、ITGA6、ITGB4、LAMA3、LAMB3、LAMC2
影響を受けるタンパク質
17型コラーゲン、インテグリンα3サブユニット、インテグリンα6β4、ラミニン-332
影響を受ける皮膚の層
真皮と表皮の間
De Rosa L, Latella MC, Secone Seconetti A, et al.Cold Spring Harb Perspect Biol. 2020より一部改変して引用。
日本で表皮水疱症と診断された人のうち、約6割がDEBです。
EBの型によって遺伝的要因は異なりますが、「皮膚が非常にもろい」という点はどの型にもあてはまります。
皮膚がもろいことで、水ぶくれや傷、瘢痕などができたり、皮膚の感染症が起こったりします。また、EBのある人は、爪の成長が遅れる、爪が厚く黄色くなるなど、手足の爪にもトラブルが生じることがあります。
EBによる生活への影響は、患者さんによって大きく異なります。
EBの症状はどの型でも共通ですが、それが生活にどのように影響するかは、患者さんによって異なります。同じ型のEBであっても、症状の重さには軽度から重度まで幅があります。
なかでもDEBは深刻な合併症を引き起こすことがあります。
DEBによる傷は、どれも慎重な対応が求められます。傷の大きさにかかわらず、感染症やがんなどの合併症を引き起こす可能性があるためです。
患者さんご自身や、あなたの大切な人の皮膚が非常にもろく、水ぶくれができやすくても、それがDEBかどうかは、見た目だけではわかりません。DEBかどうかを正確に知ることが大切です。
*キンドラー表皮水疱症(KEB)という、極めてまれな型もあります。kindlin-1(キンドリン1)というタンパク質の欠損により、皮膚の複数の層に影響が及びます。
DEBは、COL7A1と呼ばれる遺伝子変異により、正常にはたらく7型コラーゲンというタンパク質が不足することで起こります。
COL7A1遺伝子は7型コラーゲンをつくるための設計図のような役割を担っています。7型コラーゲンには、皮膚の外層と内層、さらに一部の臓器の内膜をつなぎとめるはたらきがあり、皮膚の強度や安定性を保つために重要な役割を果たしています。DEBの患者さんでは、このタンパク質が生まれつきなかったり、少なくなったりしています。
DEBの影響を受けていない皮膚では、7型コラーゲンがアンカリングフィブリル(係留線維)の形成を助けています。
アンカリングフィブリルは、皮膚の内層(真皮)と外層(表皮)の層を結びつける役割を果たしています。
DEBの患者さんでは、COL7A1遺伝子の変異により、体内で7型コラーゲンがまったく作られなかったり、十分に働く7型コラーゲンが不足したりしています。
結果、アンカリングフィブリルが不足し、摩擦によって皮膚の層が簡単にはがれてしまいます。
De Rosa L, Latella MC, Secone Seconetti A, et al. Cold Spring Harb Perspect Biol. 2020より一部改変して引用。
DEBの遺伝形式には、顕性(けんせい)遺伝と潜性(せんせい)遺伝 の2種類があります(優性遺伝、劣性遺伝とも呼ばれます)。
私たちは両親から1つずつ、合計2つの遺伝子のコピーを受け継ぎます。顕性遺伝(優性遺伝)の場合、両親いずれかの遺伝子に変異があれば、DEBが発症します。潜性遺伝(劣性遺伝)では、両親の遺伝子にどちらも変異がある場合にのみ、DEBが発症します。
DEBでは、遺伝形式は顕性(優性)と潜性(劣性)のいずれかで、それぞれ顕性(優性)栄養障害型表皮水疱症(DDEB)、潜性(劣性)栄養障害型表皮水疱症(RDEB)を発症します。
顕性(優性)栄養障害型表皮水疱症
COL7A1遺伝子の顕性(優性)変異を、子どもが1つ受け継ぐとDDEBを発症します。
次のような可能性があります。
潜性(劣性)栄養障害型表皮水疱症
COL7A1遺伝子の潜性(劣性)変異を子どもが2つ受け継ぐと、RDEBを発症します。
次のような可能性があります。
親から受け継がれず、家族の中で初めてDEBの遺伝子変異が発生することもあります。このような変異はde novo変異と呼ばれます。
DEBと診断されると、聞き慣れない専門用語を耳にすることがあるかもしれません。これらの用語を知っておくと、医師や医療従事者との会話に役立つでしょう。
DEBとは、Dystrophic epidermolysis bullosa(dis-ˈtrō-fik ep-ih-dur-MOL-uh-sis buhl-LOE-sah)の略称です。
COL7A1という遺伝子に変異が生じることで発症する遺伝性疾患です。この遺伝子変異により、皮膚の表皮と真皮の層、さらに一部の臓器の内膜がはがれやすくなります。
Dystrophic:組織の障害や変性を意味します。DEBでは、皮膚や一部の臓器の内膜が影響を受けます。
Epidermolysis:皮膚の層が損傷することを指します。
Bullosa:水ぶくれを意味します。
皮膚が非常にもろくなる、まれな遺伝性疾患群の総称です。皮膚へのわずかな外傷や摩擦でも、痛みを伴う水ぶくれが生じる可能性があります。
VII型コラーゲンタンパク質を作る指令を出す遺伝子です。コラーゲンは、全身の皮膚、骨、腱、靭帯などの結合組織を強化し、支持するタンパク質のファミリーです。
アンカリングフィブリル(係留線維)を構成する主要な要素で、皮膚の強度と安定性を保つうえで重要な役割を果たします。
皮膚の表皮と真皮の層をつなぎ、密着を助ける組織です。
私たちは両親から1つずつ、計2つの遺伝子を受け継ぎます。顕性(優性)遺伝形式では、一対の遺伝子のうち片方に変異があれば、影響があらわれます。
私たちは両親から1つずつ、計2つの遺伝子を受け継ぎます。潜性(劣性)遺伝形式では、一対の遺伝子の両方に変異がある場合にのみ、影響があらわれます。
DEBの重症度をあらわす用語です。限局型DEBでは、症状が体の一部にのみあらわれます。限局型DEBの患者さんでは、主に手指や足指に症状があらわれ、手足の指の皮膚がもろくなるほか、爪が厚くなったり変色したりすることが多いとされています。
DEBの重症度をあらわす用語です。中等症DEB患者さんの症状はさまざまです。中等症のDEBでは、皮膚のもろさが体の広い範囲に及び、しばしば肘、膝、足首、手のひらや手の甲にもあらわれます。また、中等症DEBでは、限局型DEBに比べて重篤な合併症を引き起こすリスクが高くなります。
DEBの重症度をあらわす用語です。重症DEBの人の多くは潜性(劣性)栄養障害型表皮水疱症で、広範囲の皮膚が生まれつき非常にもろくなっています。重症DEBでは、生命を脅かす重篤な合併症やがんを発症するリスクが高いとされています。
皮膚生検とは、臨床検査のために体から細胞や皮膚組織のサンプルを採取する処置です。
遺伝子検査では、血液サンプルや頬の内側を綿棒でこすって採取したサンプルを使用します。このサンプルからDNAを抽出し、検査室で特定の遺伝子や遺伝子群に変異があるかどうかを調べます。
Not all blisters are the same. Could yours be DEB? Ask your doctor about a genetic test for DEB